製品安全規則 GPSR (General Product Safety Regulation) (EU) 2023/988について知ってみよう!

皆さん、こんにちは。こんばんは。

最近、よく寄せられる質問の一つに、「機械指令や機械規則、または低電圧指令に該当しない製品をどのようにヨーロッパに持ち込めばよいのか?」というものがあります。基本的には「何もしなくてよい」というわけではありません。これらの規則や指令に該当しない製品であっても、一般製品安全規則(GPSR)の適用範囲に入ることがあるのです。GPSR は製品安全において重要な考え方の一つであり、2024年12月から施行されます。

皆さん、今のうちに基本をしっかりと学んでおきましょう。

目次

製品安全規則概要 GPSR (General Product Safety Regulation) (EU) 2023/988

EU は2023年5月23日に新しい一般製品安全規則(GPSR)(EU) 2023/988 を導入しました。これにより、旧製品安全指令が改正され、消費者製品の安全性を強化することを目的としています。特にデジタル化に対応するため、オンラインマーケットプレイスやフルフィルメントサービスプロバイダーが個人的適用範囲に含まれるようになりました。また、製品の安全性評価基準が新たに設けられ、メーカーには内部リスク分析を実施する義務が課されます。さらに、製品のトレーサビリティや事故報告義務、リコール時の消費者への対応策提供などが強化されました。これらの規則は2024年12月13日からすべてのEU 加盟国に適用されます。

改正の主要ポイント

改正の主要ポイント
  • 新しい一般製品安全規則(GPSR)が導入され、旧製品安全指令が改正されました
  • オンラインマーケットプレイスやフルフィルメントサービスプロバイダーが適用範囲に含まれます
  • 製品の安全性評価基準が新たに設定されました
  • 規則は2024年12月13日から適用されます
  • メーカーには内部リスク分析の実施義務があります
  • 製品のトレーサビリティや事故報告義務が強化されています
  • リコール時の消費者への対応策提供が義務付けられています

Article 3

Definitions

For the purposes of this Regulation the following definitions apply:

(12)

‘fulfilment service provider’ means any natural or legal person offering, in the course of commercial activity, at least two of the following services: warehousing, packaging, addressing and dispatching, without having ownership of the products involved, excluding postal services as defined in Article 2, point (1) of Directive 97/67/EC of the European Parliament and of the Council (27), parcel delivery services as defined in Article 2, point (2) of Regulation (EU) 2018/644 of the European Parliament and of the Council (28), and any other postal services or freight transport services;

(14)

‘provider of an online marketplace’ means a provider of an intermediary service using an online interface which allows consumers to conclude distance contracts with traders for the sale of products;

https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2023/988/oj
フルフィルメントサービスプロバイダー

商業活動の一環として、以下のサービスのうち少なくとも2つを提供する自然人または法人を意味する。倉庫保管、梱包、宛名ラベルの貼付および発送。ただし、関与する商品の所有権を有さないものとする。欧州議会および理事会指令97/67/EC 第2条(1)項 で定義される郵便サービスを除く 欧州議会及び理事会指令97/67/EC 第27条 に定義される郵便サービス、欧州議会及び理事会規則(EU)2018/644 第2条(2) に定義される小包配達サービス、及びその他の郵便サービス又は貨物輸送サービスを除く。

オンラインマーケットプレイスプロバイダー

消費者が商品販売のために取引者と遠隔契約を締結することを可能にするオンラインインターフェイスを使用する仲介サービスのプロバイダーを意味する

2条 GPSR のスコープ

GPSR は、製品の安全性を確保するための包括的な枠組みを提供します。この規則は、特定の製品安全に関する既存のEU 法でカバーされていない側面に焦点を当て、市場に提供される全ての製品に適用されます。ただし、医薬品や食品など、特定のカテゴリーの製品は除外されます。この規則の目的は、消費者の安全を守りつつ、製品の流通を円滑にすることです。予防原則を考慮しながら、消費者保護法との調和を図ることで、EU 市場における高い安全基準を維持します。

一般的な適用範囲
  • GPSR は、特定の製品安全に関するEU法で同じ目的の規定がない限り、市場に提供される製品に適用されます。
  • 特定のEU 法によって安全要件が課されている製品については、その要件でカバーされていない側面やリスクにのみ適用されます
特定の除外

以下の製品にはこの規則は適用されません

  • 医薬品(人間用および動物用)
  • 食品および飼料
  • 生きている植物と動物、遺伝子組換え生物、遺伝子組換え微生物
  • 動物由来の副産物および派生製品
  • 植物保護製品
  • 消費者が操作しない輸送サービスに関連する設備
  • 特定の航空機
  • 骨董品
製品の状態に関わらない適用

新品、中古品、修理済み、または再生品であるかに関わらず、市場に提供される製品に適用されます。ただし、修理または再生が必要であることが明示されている製品には適用されません。

消費者保護法との関係

の規則は、EU の消費者保護法で定められた規則を損なうものではありません。

予防原則の考慮

規則の実施にあたっては、予防原則を考慮に入れる必要があります。

6条 製品の安全性を評価するための側面

GPSR では新しい製品安全性評価基準が設定されました。この基準はスマート製品にも適用され、以下のポイントを含みます。

GPSR の新たな新たな評価基準

  • 製品のデザインや構造、技術的特徴 
  • 他の製品との相互作用
  • 製品の表示方法
  • 消費者特有の側面
  • 製品の誤用の可能性
  • サイバーセキュリティ機能
  • 製品の進化や学習、予測機能

9条 製造者の義務

製品を市場に投入する際、製造者には多くの義務があります。これらの義務は、製品の安全性と消費者の保護を確保するために不可欠です。

特筆すべきは、製造者は、すべての製品に対して内部リスク分析を行い、製品の説明や安全性に関する技術文書を作成する義務があります。これには、複雑でない製品の除外はありません。リスクが高い場合、製造者の義務はより厳しくなり、技術文書は10年間保管される必要があります。

安全性に関する対応は、製品が危険であると判断した場合、製造者は直ちに是正措置を講じ、消費者と市場監視当局に通知しなければなりません。そして、消費者からの苦情や事故報告を調査し、内部に記録を残すことが求められます。

基本的な義務

設計と製造

製品は、一般的な安全要件に従って設計・製造されなければなりません

リスク分析と技術文書

市場投入前に内部リスク分析を行い、製品の一般説明や安全性評価に関連する特性を含む技術文書を作成する必要があります

文書の維持

技術文書は常に最新の状態に保ち、市場監視当局に10年間提供できるようにします。

識別情報

製品には、識別可能なタイプ、バッチ、またはシリアル番号を付ける必要があります。

製造者情報の表示

製品またはそのパッケージに製造者の名前や連絡先を表示します。

使用説明書と安全情報

消費者が理解できる言語で明確な使用説明書と安全情報を提供します。

13条 製造業者の義務が他の者に適用される場合

製品を市場に出す際には、製造者としての責任を理解することが重要です。13条では、特定の条件下で製造者の義務が他の自然人または法人に適用されるケースについて説明しています。

自らの名前または商標で製品を販売する場合

自然人または法人が自らの名前または商標で製品を市場に出した場合、その人物は製造者と見なされ、9条に定められた製造者の義務を負うことになります。

製品を大幅に変更する場合

製造者以外の自然人または法人が製品を大幅に変更した場合、その人物は製造者と見なされ、変更が製品の安全性に影響を与える場合、変更された部分または製品全体に関して 9条に定められた製造者の義務を負います。

大幅な変更の定義

製品の物理的またはデジタル的な変更が以下の基準を満たす場合、それは「大幅な変更」と見なされます。

  • 初期のリスク評価で予見されていない方法で製品が変更されている
  • 危険の性質が変化し、新たな危険が生じたか、リスクのレベルが増加した
  • 消費者自身や彼らのために使用するために行われた変更ではない

16条 EU 市場に流通する製品に関する責任者

EU 市場に製品を投入する際には、特定の経済事業者がその製品に対する責任を持つことが求められます。この責任者は、製品が規制に従っていることを確認し、消費者の安全を確保するための重要な役割を果たします。

主な義務

経済事業者の存在

製品が市場に出されるためには、EU 内に設立された経済事業者が必要です。この事業者は、製品が規制に準拠していることを確認する責任を負います。

製品の安全確認

経済事業者は、製品が技術文書に従っているか、また規制の要件を満たしているかを定期的にチェックしなければなりません。市場監視当局の要求に応じて、これらのチェックの証拠を提供する義務があります。

連絡先情報の表示

責任を持つ経済事業者の名前、登録商標、連絡先情報(郵便および電子アドレス)は、製品またはその包装に表示される必要があります。

18条 特定の製品、カテゴリーまたは製品グループに対する特定のトレーサビリティ要件

消費者の健康と安全に重大なリスクをもたらす可能性のある特定の製品、カテゴリー、または製品群に対して、EU委員会はトレーサビリティシステムを設定することができます。このシステムは、製品の供給チェーンに関与する経済事業者が従うべきものとなっています。

トレーサビリティシステムの概要

データの収集と保存

トレーサビリティシステムは、製品やその構成部品、供給チェーンに関与する経済事業者の識別を可能にするデータの収集と保存を含みます。これには、電子的手段によるデータの保存も含まれます。

データの表示とアクセス

製品、包装、または添付文書にデータキャリアを配置することで、データの表示とアクセスを可能にします。

委任法の採択

委員会は、消費者の健康と安全に重大なリスクをもたらす可能性のある製品を特定し、収集すべきデータの種類やデータへのアクセス方法を指定するために、委任法を採択する権限を持ちます。

データアクセスの権利

市場監視当局、消費者、経済事業者などの関係者は、それぞれのアクセス権に基づいてデータに無料でアクセスできるようになります。

実施における考慮事項

委員会は、実施措置の費用対効果、企業(特に中小企業)への影響、他のトレーサビリティシステムとの互換性を考慮に入れます。

19条 通信販売の場合の経済事業者の義務

GPSR は、通信販売チャネルを通じた製品の販売に特別な規則を設けています。オンラインまたはその他の遠隔販売チャネルを通じて販売される製品は、市場で入手可能とみなされます。この規則により、遠隔販売における経済事業者には、製造者の情報、EU 経済事業者の識別情報、製品の識別表示、警告または安全情報を提供する義務が課されます。

オンラインマーケットプレイスのプロバイダーもこれらの義務の対象であり、市場監視当局が連絡できる中央連絡窓口を指定し、消費者が製品の安全性に関する質問を迅速に伝えることができる窓口を提供する必要があります。また、組織的な義務や市場監視当局への報告・協力義務も負います。

経済事業者がオンラインまたは遠隔販売を通じて製品を市場に提供する際、以下の情報を明確かつ見やすく表示する必要があります。

  • 製造業者の名前、登録商号または登録商標、および連絡可能な郵便および電子アドレス
  • 製造業者がEUに設立されていない場合、責任者の名前、郵便および電子アドレス
  • 製品を識別するための情報(製品の画像、タイプ、その他の識別子を含む)
  • 製品または包装に付ける警告または安全情報(消費者が理解しやすい言語で提供すること)

37条 製品安全リコールの場合の救済措置

GPSR は、製品リコールが発生した場合に経済事業者に対して消費者への救済措置を提供する義務を課しています。具体的には、リコール製品の修理、同等の安全な製品との交換、または購入価格に相当する弁償を無料で提供することが求められます。この規定は保証法体制に影響を及ぼし、消費者製品の価格や保険の設計に影響を与える可能性があります。製品安全リコールにおいては、消費者の権利と利便性が最優先されるように設計されています。

基本的な義務

経済事業者(製品を管理する事業者)は、製品安全リコールが発生した場合、消費者に対して効果的で無償かつ迅速な救済措置を提供しなければなりません。

選択肢の提供

経済事業者は、以下の救済措置のうち少なくとも2つを消費者に提供する必要があります

  • リコール製品の修理
  • 同種で同等の価値と品質を持つ安全な製品への交換
  • 消費者が支払った価格と同額の適切な返金
例外規定

他の救済措置が不可能である場合、または提案された救済措置と比較して過度なコストを伴う場合は、1つの救済措置のみを提供することが許可されます。

消費者の権利

経済事業者が合理的な期間内に修理または交換を完了しない場合、消費者は常に返金を受ける権利があります。

消費者による修理

消費者が自ら修理を行う場合、それが簡単かつ安全に実施でき、リコール通知に記載されている場合に限り、有効な救済措置とみなされます。必要な指示、交換部品、またはソフトウェアアップデートは無償で提供されます。

製品の廃棄

消費者による製品の廃棄は、簡単かつ安全に行える場合に限り、消費者の行動の一部として含まれ、返金または交換の権利を損なうことはありません。

消費者の負担軽減

救済措置は消費者に大きな不便を与えてはならず、消費者が製品を発送したり返送したりする費用を負担することはありません。持ち運びが難しい製品については、経済事業者が製品の回収を手配します。


GPSR(一般製品安全規則)は、規則(EU)2024/1435 によって、消費者保護の観点からリコールに関する厳しい要件が設けられています。次回は、このGPSR に基づくリコールの詳細について解説します。

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