皆様、いつも大変お世話になっております。インテリスク株式会社 代表の中川です。
おかげさまで、インテリスク株式会社は2026年10月をもちまして、創業3周年を迎えることができました。そして3期目の決算においても黒字を確保し、3年連続の黒字決算を達成することができました。
これもひとえに、お仕事をご依頼くださったお客様、支えてくださった協力パートナーの皆様、そして日頃からこのブログを読んでくださっている皆様のおかげです。心より御礼申し上げます。
3周年を前に、ご報告したいこと
この節目を前に、どうしてもご報告したいことがあります。
機械安全AIプラットフォーム「RA+(アールエープラス)」を、無事にローンチできたことです。
RA+は、開業する前、いまから約4年前からずっと頭の中にあった構想でした。当時から、頭の中には設計図がはっきりと見えていました。それがこうして形になり、皆様にお届けできるところまで来たことを、本当に嬉しく思っています。
RA+に込めた想い
RA+で目指したのは、「リスクアセスメントを、誰もが手の届く価格で、自由に、平等に行える環境」です。
正直に申し上げると、機械安全の業界には残念な現実もあります。
中身の伴わないコンサルティング。コンサルティングを名乗りながら、実際にはエンジニアを手配して手数料を取るだけのビジネス。自社の部品や製品を売ることが目的で、結論がそちらへ誘導されてしまう提案。規格のごく一部しか知らないまま、断定的に語られるアドバイス。
こうしたものにお客様が振り回されることのない世界をつくりたい。それがRA+の出発点の一つです。
そしてもう一つ。リスクアセスメントはこれまで、「誰がやるか」で品質が大きく変わる、属人的な仕事でした。RA+では、その属人性から皆様を解放し、企業の中でリスクアセスメントを支えるプラットフォーム(共通の土台)となる、本来あるべき姿を目指しました。
構想から開発へ ― インターネットにつながないAIという選択
4年前の構想段階では、リスクアセスメントのデータベースを「決定論」、つまり「この条件ならこの答え」と決まったルールで組み立てられないかと考えていました。
しかし近年のAIの急速な進歩を見て、考えが変わりました。誰がリスクアセスメントをしても一定の均一な品質に届くよう、AIがサポートできないか、と。
同時に、大きな壁がありました。サイバーセキュリティの問題です。
インターネットに接続されたパソコンは、常に悪意ある攻撃や、知識不足による意図しない改ざんの危険にさらされています。また、企業の大切な設計情報・開発情報を、インターネット上の汎用AIサービスにアップロードすることにも大きなリスクがあります。
そこで私は、「インターネットを介するAIサービスは、機械安全の現場では使えない」と判断しました。そして、インターネットに接続しない状態(オフライン)でAIに文章を生成させる、という道を選びました。
そこからの「地獄の日々」
そこからは、まさに地獄の日々でした。
規格の意味をAIが正しく扱えない。生成される結果がバラバラになる。チャンク(規格の文章を、AIが扱いやすい長さに区切ったもの)と数値とベクトル(言葉の意味を数値で表したもの)が、どうしても噛み合わない……。
AIの仕組みを理解すればするほど、AIの「癖」や、より良い組み立て方が見えてきます。そのたびに、また一からやり直し。何千回、何万回というコードの書き直しを重ねて、ようやくここまでたどり着くことができました。
4年前に書いたコードやデータベースは、今ではまったく使っていません。目指す姿は同じでも、中身はまったくの別物になりました。
本業との両立
お客様からお預かりした審査、リスクアセスメント、電気試験、報告書の作成は、一切手を抜くわけにはいきません。開発に充てられるのは、本業の合間や、一日の仕事を終えたあとの時間だけでした。
それでも、本業があったからこそ見えたものがあります。現場でお客様が困っていること、報告書づくりで毎回つまずくところ。それらがそのまま、RA+の開発の課題リストになりました。RA+は机の上だけで考えたものではなく、機械安全の現場から生まれた道具です。
苦労するのは、私だけでいい。使ってくださる皆様には、楽をしていただきたい。
危険な機械による災害を、一つでもなくしたい。その想いだけで、RA+をつくり上げました。
RA+のこだわり
なぜパソコンごとお届けするのか
RA+は、インターネット上のサービスではありません。AIを動かすプログラムと規格の情報を入れたMac miniを、パソコンごとお客様にお貸し出しする形をとっています。
インターネットにつながなくても、AIはそのパソコンの中だけで動きます。お客様の図面や設計情報が、社外に出ていくことはありません。
現場で撮影した機械の写真も、iPhoneやiPadからAirDrop(Apple製品どうしで、インターネットを経由せずに直接ファイルを送る機能)で取り込めるようにしました。最初から最後まで、オフラインを守る。それがRA+のこだわりです。
「1つの危険源につき1ページ」
冒頭で「頭の中に設計図が見えていた」と書きました。その中心にあったのが、「1つの危険源につき1ページ」という考え方です。
危険源とは、挟まれ、巻き込まれ、感電など、けがの原因になりうるもののことです。その危険源ごとに、どこにあって、どんな危険で、リスクをどう見積もり、どう対策したのかを、1ページにまとめます。
後から見返した人が、そのページだけで判断の流れを追える。担当者が替わっても、そのページを見れば引き継げる。属人的なリスクアセスメントから抜け出すための土台が、ここにあります。
RA+は指図しない
RA+のAIは、答えを押しつけません。根拠となる規格の箇所を示し、下書きを用意するところまでがAIの役割です。それを採用するか、直すか、外すかを決めるのは、あくまでお客様ご自身です。画面に表示するお知らせも、事実だけを短く伝えるようにしています。
機械の安全に最終的な責任を持つのは、その機械をつくり、使う人です。だからこそAIは「先生」ではなく、隣で資料をそろえてくれる頼れる助手であるべきだと考えています。
現場で使いやすい画面へのこだわり
もう一つ、とことんこだわったのが画面の使いやすさです。
リスクアセスメントは、机の上だけで完結する仕事ではありません。機械の前に立ち、実物を見ながら確認していく作業です。だからこそ、現場でiPadなどを手に持ったままでも迷わず操作できるよう、ボタンの大きさや配置、画面から画面への移り方を一つひとつ考え抜きました。
押したいボタンが、押したい場所にあるか。次に進む操作が、自然な流れになっているか。実際に自分で操作しては違和感を見つけ、直しては試す。その繰り返しです。画面もまた、プログラムと同じく何千回、何万回とやり直してきました。正直に言えば、ここもまた大きな苦労の一つでした。
使う人が操作に迷わないことは、それ自体が「属人性をなくす」ことにつながると考えています。
4年目に向けて
3周年の門出にあたり、インテリスク株式会社は、新しい「RA+」と、これまで培ってきた専門家によるコンサルティングサービスの両輪で、さらなる飛躍を目指してまいります。
2027年1月20日からは、EUの新しい機械規則(EU)2023/1230の適用が始まります。新規則への対応が追いついていない企業様にとって、RA+はきっと心強い味方になると考えています。
さらにRA+では、今後次の機能への対応を進めていく予定です。
- ISO 13849-1 に基づくSRS(安全要求仕様書)の作成
- prEN 50742(機械のサイバーセキュリティ)に基づくSRSLの設定
リスクアセスメントを、もっと身近に感じていただけるように。そして、日本のものづくり産業の発展を下から支える会社となれるように。
4年目のインテリスク株式会社も、精一杯がんばってまいります。
今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。
インテリスク株式会社
代表取締役 中川 潤一
